セキュリティエキスパート(脆弱性診断)の将来性 — AIに奪われる業務・残る業務
最終更新: 2026/03/24
脆弱性診断は、システムへの侵入ポイントを特定するスキャン作業がAI化される一方で、発見した脆弱性をビジネスリスクとして経営層に判断させるプロセスは人間の役割に依存します。診断レポート作成やツール実行はAI化加速し、複雑な環境での修復計画や優先順位決定は専門家の経験がより重要になります。
セキュリティエキスパート(脆弱性診断)とは
様々な情報システムが外部からの侵入や攻撃に対して弱点や問題点がないか診断する。
この職種のAI浸透度は49%。 12件の業務のうち5件でAIが活用され、7件は人間が中心です。 AIとの共存が鍵の職種です。
なるには
2000年頃から生まれた職業であり、まだ定型的な入職ルートはない。高専や専門学校で情報系を学んだ者も、大学卒や大学院卒も居る。大学卒、大学院卒の理系をイメージするが文系も多い。セキュリティ・キャンプ(学生に対して情報セキュリティに関する高度な教育を実施し、次代を担う情報セキュリティ人材を発掘・育成するために情報処理推進機構が実施している事業)に参加した学生は、この分野の基礎は身に着けていると評価される。また、脆弱性診断に関する世界的なコンテストがあり、その上位者は実力が認められ、仕事をオファーされたり、ヘッドハントされたりする。 システム開発を行ってきた者がこの仕事をするようになることも多い。システムの中身を知っていることが脆弱性診断を行う上で強みとなる。デジタルフォレンジックを行っていた者やシステムの運用を行っていた者が移ってくることも多い。ただし、開発を行うエンジニア等が仕事の一部として行っていることは少なく、多くの場合、脆弱性診断を専門に行っている。同業他社間での移動は非常に多い。個人としての転職の動機は「自分の強みを発揮したい」、「新たな仕事にチャレンジしたい」等が多く、会社側は「強化したい分野の人材を求める」等の理由が多い。話題性のある新しい、チャレンジしたい仕事がある会社に専門能力を高めたい人材が流れていく傾向がある。 関係団体が仕事に必要とされるスキルを体系化するプロジェクト(スキルマッププロジェクト)を進めており、「技術に関する基礎知識」、「脆弱性に関する基礎知識」、「診断業務の基礎知識」、「評価に関する知識」、「報告に関する知識」、「関係法令の知識」として整理されている。スキルの体系から教育訓練カリキュラム(シラバス)を作成する動きもあり、さらに資格化も検討されている。ただし、手動診断などでの高度な診断は専門性が非常に高く、状況の変化も激しいため、会社や団体が教育訓練を行うことは難しい。自身の興味、関心から、専門知識を深め実務の経験等を通してスキルを極めていく形で自分の能力を高めていく場合が多い。 必要な情報の大半は英語のため、英語能力も必要であるが、自動翻訳の性能が向上しそれも使いながら情報を得られればよい。 仕事に必要な新鮮な情報は関係コミュニティや業界団体から得ることが多い。新しいセキュリティの問題点等、コミュニティ参加者のSNSで話題になることが多い。 ある程度の知識とスキルを身に着け会社に入り、仕事をしながら力を付けていく。典型的なコースとしては、まず、プロジェクトマネージャ等のもと、診断のガイドラインに沿って、スキャナを使用した自動検査を担当する。診断実施計画書に沿ってこのレベルの作業を行うだけであれば、数か月から半年でもできる。このような自動検査の経験を積み、手動検査を担当するようになる。手動検査では脆弱性の診断実施計画書、ガイドラインに沿って作業を行うが、非定型な要素が多くなり、経験に基づく勘や閃きのようなものが必要となる。このためこのレベルになるには3~5年かかる。 キャリアの次の段階は診断プロジェクトのマネジメントであり、経験を積んだ者が診断案件を担当し、顧客との交渉や診断プロジェクトの管理を行う。診断のスキルに加えてビジネススキルやマネジメントスキルが求められる。 その次の段階がグループのマネジメントであり、会社の課長、部長に相当する。会社の経営計画に沿って、診断プロジェクトのマネジメントを行う者をまとめたり、新たな事業展開を進める。グループを引っ張るリーダーシップ、社会や技術の先を読む先見性、周辺分野の動きが分かる広い視野が求められる。 一方でこのようなマネジメントに進むのではなく、顧客や一般向けの研修の担当者となったり、脆弱性診断の特定分野の専門性を高めていく者もいる。 診断スキル以上に、この仕事では高い倫理観と使命感が求められる。診断のスキルや知識を悪用し、情報システムを攻撃したり、情報を盗み取ることもできてしまうためである。脆弱性診断はより高度な細分化された知識が必要になっており、新しいシステムも次々に登場するため、探求心、好奇心が求められる。
AI時代に伸ばすべきポイント
- コンピュータファイルの保護と緊急時データ処理の計画を策定する・コンピュータウイルスの最新報告を監視し、ウイルス対策の更新時期を判断するを極める — AIでは代替できない領域
- データファイルの使用を監視し、アクセスを制御してコンピュータ内の情報を保護するのAIツールを習得 — 効率化の武器に
AIはどこまで浸透しているか
セキュリティエキスパート(脆弱性診断)の業務全体のうち、実際にAIが使われている割合です。
業務の49%でAIが活用されていますが、残り51%は人間ならではの対応が求められています。
業務ごとのAI浸透度
セキュリティエキスパート(脆弱性診断)の業務を、情報処理面でのAI浸透度で分類しました。身体作業や対面業務の実行は含みません。
AIが担う業務
人間が担っている業務
この分析の見方
各業務のAI浸透度はAnthropic Economic Indexの実測データに基づきます。
※ AI浸透度は業務の情報処理・判断面への浸透を測定しています。身体作業や対面対応など物理的な実行はAIでは代替できないため、浸透度が高くても人間の作業が不要になるわけではありません。
- AIが担う業務
- 情報処理面でAIが50%以上浸透している業務。ただし身体作業を伴う場合、実行は引き続き人間が担います。
- 人間が担っている業務
- AI浸透度が50%未満の業務。対面対応・信頼関係・判断力など人間ならではの強みが求められるか、AI技術がまだ追いついていない領域です。
カラーバーは業務ごとの「AIの使われ方」を示します:
- AI直接指示(赤系)
- AIに直接タスクを指示する自動化的な利用。この割合が高いほど、AIが主導的に業務を行っています。
- やり取り改善(青系)
- 人間とAIが対話しながら成果を改善していく協働型の利用。
- フィードバック(紫系)
- AIの出力に対して人間がフィードバックを返す利用パターン。
- 学習(緑系)
- AIを通じて知識やスキルを習得する目的の利用。
- 検証(黄系)
- AIの出力を人間が確認・検証する利用。
業界で変わるAIの影響
同じセキュリティエキスパート(脆弱性診断)でも、働く業界によってAIの影響度は異なります。デジタル化が進んだ業界ほど、AIとの接点が多くなります。
この分析の見方
- すでにAI化
- AIが直接代行している業務の割合。どの業界でも共通です。
- AI活用で伸びる
- AIツールを使いこなすことで生産性を上げられる領域。個人のスキルと業界のIT環境に左右されます。
- 組織のAI導入で恩恵
- 会社がAIシステムを導入することで、自然と恩恵を受けられる領域。
- 人間のみ
- 身体作業・対面・感情など、現在のAI技術では対応できない領域。
この職種の年収
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」に基づくセキュリティエキスパート(脆弱性診断)の給与水準です。
業界で変わる年収
同じセキュリティエキスパート(脆弱性診断)でも、働く業界によって年収は大きく異なります。
出典: 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(2023年)
働く環境と雇用形態
雇用形態
近い職種のAI浸透度
セキュリティエキスパート(脆弱性診断)とキャリアが近い職種を、AI浸透度の違いで比較できます。
AIがより浸透している職種
セキュリティエキスパート(脆弱性診断)の将来性とAIの影響
「セキュリティエキスパート(脆弱性診断)はAIに代替されるのか?」という不安を持つ方に向けて、データに基づく分析をお届けします。
AI代替率: 49%
AI代替率は49%で一部の業務は自動化が進みますが、多くの業務は引き続き人間が中心です。
AIが変える業務
データファイルの使用を監視し、アクセスを制御してコンピュータ内の情報を保護する、新規ソフトウェアの導入・エラー修正・個人アクセス権限の変更のためセキュリティファイルを修正する、データ処理システムのリスク評価とテストを実施し、機能とセキュリティを確認するなどはAIの活用が進んでいます。これらの業務は効率化される一方、新たな役割が生まれます。
AI時代に求められるスキル
AIツールを活用しながら、人間にしかできない判断力やコミュニケーション力を磨くことが重要です。
よくある質問
セキュリティエキスパート(脆弱性診断)はAIでなくなりますか?
セキュリティエキスパート(脆弱性診断)がAIで完全になくなる可能性は低いです。AI代替率は49%で、7件の業務は引き続き人間が担います。ただしAI活用スキルが将来性を左右します。
セキュリティエキスパート(脆弱性診断)はAIに代替される?
脆弱性診断ツール自体がAI化されつつありますが、複雑な環境での診断設計やスキャン結果の解釈、発見した脆弱性の事業影響評価は、AIが提示する候補から最終判断を下す人間の役割が増していきます。
セキュリティエキスパート(脆弱性診断)でAIはどう活用される?
業種により異なりますが、AI総合活用度は74%です。すでにAI化されている部分が49%、AI活用で伸ばせる部分が13%、組織のAI導入で恩恵を受ける部分が12%です。
セキュリティエキスパート(脆弱性診断)の将来性は?
スキャン実行はAIに任せつつ、『なぜその脆弱性が経営上のリスクか』を戦略的に説明できる専門家へシフトします。サイバー攻撃の多様化に対応するリスク判定能力が差別化要因になります。
AI時代にセキュリティエキスパート(脆弱性診断)に必要なスキルは?
技術知識に加えて、発見結果を経営リスク言語に翻訳する力が求められます。AIが見落とす『ビジネスロジックの脆弱性』や『組織運用上の穴』を見出す戦略的思考が不可欠です。
セキュリティエキスパート(脆弱性診断)で生成AIをどう活用できる?
セキュリティエキスパート(脆弱性診断)では5件の業務でAIが活用されています。主な活用領域はデータファイルの使用を監視し、アクセスを制御してコンピュータ内の情報を保護する、新規ソフトウェアの導入・エラー修正・個人アクセス権限の変更のためセキュリティファイルを修正する、データ処理システムのリスク評価とテストを実施し、機能とセキュリティを確認するなどです。
AI時代の職業ニュースを毎週お届け
541職種のAI浸透度データに基づく週間レポートを無料配信。あなたの職種に影響するAIニュースを見逃さない。
最終更新: 2026/03/24
AI浸透度はAnthropicのAnthropic Economic Index (AEI)の観測値(CC-BY)に基づく。業種別分析は独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)作成「職業情報データベース」のデータを加工して算出。JILPTおよびAnthropicの見解ではありません。分析方法の詳細