Webマーケの作業時間99%削減が現実に — 「レポートを書く人」から「意思決定する人」へ職務が変わる

月末、GA4の画面とSearch Consoleのレポートを行き来しながら、Excelに数字をコピペし続ける。クライアント向けに27ページの報告書を仕上げる頃には深夜0時を回っている——。中小企業で一人でWebマーケティングを担当している方、代理店で複数クライアントを抱える担当者なら、この光景に覚えがあるはずです。

2026年3月、大阪の株式会社トモシビがリリースした「まるっとプラスAI」は、このレポート作業を「30時間から5分」に短縮すると発表しました(PR TIMES・株式会社トモシビ 2026年3月30日)。単純計算で99%の時間削減です。

このニュースは、Webマーケターにとって脅威でしょうか、それとも解放でしょうか。数字を冷静に読みながら、この職種でAIに任せられる部分と、人間に残る部分を整理します。

何がどれだけ削減されるのか

発表された削減数値は、レポート作業だけではありません。

従来30時間
    • GA4・Search Console・Clarityを手動で横断
    • データをExcelに転記・整形
    • グラフを作成し27ページにまとめる
AI導入後5分
  • 3ツールのデータを自動統合
  • 分析レポートをワンクリック生成
  • クライアント向けフォーマットで出力

同ツールは、Webマーケティング業務の広範囲をカバーします。戦略立案は「数日から5分」、ツール間の切り替え時間は「30分から3分」、広告クリエイティブは通常「5,000〜30,000円かけて外注」していたものが1分で複数媒体向けに生成される、とされています(同社発表)。

さらに注目すべきは、目標達成率が「45%から95%」に改善したという記載です。これは単なる時短ではなく、「AIが日々の改善提案を自動で出し続けることで、施策の実行スピードと精度が上がる」という効果を示しています。

AIが得意な領域と、人間が残す領域

「これで仕事がなくなる」と考えるのは早計です。Webマーケティングという職種を業務で分解すると、AIが肩代わりできる部分とそうでない部分が明確に分かれます。

AIが得意データ集計・レポート作成・定型的な改善提案・クリエイティブの一次案生成・競合データの整理
協働で効率化戦略フレームワークの当てはめ・チャネル別施策の候補出し・ABテストの設計提案
人間が不可欠KGI/KPIの設定判断・クライアントとの優先順位交渉・ブランドに関する意思決定・ステークホルダーとの合意形成

「まるっとプラスAI」がカバーするのは、左側と中央、つまり手を動かす作業と示唆の一次案までです。最終的に「この施策にいくら投じるか」「ブランドイメージとどう整合させるか」「クライアントとどう合意形成するか」という判断は、引き続き人間の仕事として残ります。

Webマーケター300万人の職務はどう変わるか

厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」では、Webマーケティング(ネット広告・販売促進)は平均年収約592万円、全国で需要の高い職種として位置づけられています(job tag・Webマーケティング)。

この職種は従来、以下のような時間配分で働いてきました。

約60%レポート・集計・定型資料作成に費やされてきた時間の推定比率。これが大幅に圧縮される

労働時間の6割を占めていた「手を動かす部分」が圧縮されると、残った4割——戦略立案、クライアント対話、新チャネル検証、ブランド判断——が相対的に膨らみます。つまり、職務内容そのものが変わるのです。

「レポートを作る人」としてのWebマーケターの役割は縮小しますが、「データを読んで意思決定する人」「AIに正しく指示を出せる人」としての役割は拡大します。

いま身につけるべき3つの能力

AIが業務の大半を担う時代に、Webマーケターが価値を出し続けるために必要なのは次の3つです。

1. AIに正しく指示を出す力(プロンプト設計)

同じツールでも、アウトプットの質は指示次第で大きく変わります。「何を知りたいのか」「どのフレームワークで切るのか」を言語化できる人が成果を出します。

2. AIの出力を評価する目

AIは自信満々に間違った分析を出してきます。「この数字の前提は何か」「この提案は事業フェーズに合うか」を判断できる、ドメイン知識と批判的思考が必要です。

3. 人間同士の合意形成力

クライアントが本当に求めているもの、社内の政治的配慮、ブランドとして譲れない線——これらはAIでは代替できません。「データを使って人を動かす力」が中核能力になります。

中小企業こそ恩恵が大きい

このツールが本当に効くのは、大手代理店ではなく中小企業の一人Web担当者です。大手代理店はすでに分業体制が整っていますが、中小企業では「マーケの仕事を一人で全部」という状況が一般的で、レポート作業が終わらず戦略検討に手が回らない構造的課題がありました。

月30時間が5分になるなら、その差分を「自社商品の強みの言語化」「顧客インタビュー」「競合との差別化検討」に回せます。中小企業のマーケティング水準を一段押し上げる可能性があります。

関連する職種のAI影響度

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まとめ

「まるっとプラスAI」が示したのは、Webマーケティングの現場で「手を動かす作業」がほぼゼロになる未来です。月30時間のレポート作業が5分になるという数字は、職務そのものの構成を書き換えるインパクトを持っています。

しかし、Webマーケターという職業そのものが消えるわけではありません。消えるのは「レポートを書く人」という役割であり、残るのは「データをもとに意思決定し、クライアントと合意形成する人」という役割です。

AIに仕事を奪われるのではなく、AIに任せた時間で何をするか——その問いに答えを持てる人が、次の時代のWebマーケターになります。

出典・参考